「世界最高のホテル プラザで10年間」奥谷啓介著2007/09/23, 東京読売新聞 朝刊, 13ページ, 405文字
◇評者・榧野信治(本社論説委員) ニューヨークのプラザホテルといえば、経済史に
確実に名前が残るホテルである。1985年秋、先進5か国の蔵相らがホテルに集まり、
ドル高是正で一致した。有名な「プラザ合意」だ。ちなみに、書評子も数年前に、この
名門ホテルに宿泊したことがある。歴史を感じさせる重厚な造作と、窓いっぱいに広がる
セントラルパークの景観に感嘆の声を上げたものだ。 
本著は、プラザに10年間勤務した日本人ホテルマンの記録である。日本人宿泊客がらみ
の様々なトラブルの処理や、日本の企業に対する営業活動などを通じ、著者が見たこと、
感じたことを書き記している。米国人のホテル従業員のおおざっぱさを嘆きつつ、日本人と
日本企業の身勝手さも鋭く指摘する。立派な日本人論、日本企業論になっているのに感心した。
同ホテルは現在閉鎖中だ。
部屋の多くをマンションに改装し、規模を縮小して近く再開するという。